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デッスンの個人日記

デッスンの個人日記

小説2 温泉郷

温泉の町、グルーディンに一組の旅人が訪れた・・・
「ふぅ~やっとグルに着いたか」
グループのリーダーである王子が呟いた。
仕方ない、ウッドベックでは戦争に巻き込まれるは、
移動中にはオーガに襲われるはで、散々な目にあったからである。
「さっさとBB荒地にあるカオス寺院に行って、先を急ごうか」
「ちょっと待ちなさいよ!」
グループの副リーダーである姫の反論が出た。
「せっかく来たんだし、ゆっくりしていこうよ」
「ゆっくりと言ってもね~ここにあるのはUBかスラレぐらいだろ?
 たいていは素通りの町だな」
「確かに、素通りの町かもしれないけど、今温泉がブームなのよ
 せっかく来たんし、よって行かないと」
王子は仲間たちを見渡した。男性たちはどうでもいいという顔をしているが、
女性たちは揃って行きたいという顔をしていた。
旅を急ぐ理由も無いため、あっさり承諾
温泉郷に向けて、テレポ屋に頼んだ。
そんな光景を見ていた者たちが居た。

温泉郷に着き、宿を取った。
王子は意外な出費にかなり悩んだ。
『さぁ~温泉に入ろう♪』
隣の部屋からは女性たちの声が聞こえた。
少し大声を出せば筒抜けである。
なぜこんな宿がこんなにも高いのか、王子は更に肩を落とした・・・
そんな王子を横目にエルフが立ち上がり、部屋を出ようとしていた。
「ん?どこ行く気だよ?」
ナイトが呼び止めた。
エルフはぎこちない動きで振り返った。
「お、温泉だよ。やっぱここに来たら温泉に入らないとね~」
ものすごく怪しい素振りで答えていた。誰がどう見ても嘘と判断できた。
「どうせ、スラレだろ」
壁際に座っていたダークエルフがボソリと呟いた。
図星だったのか、ものすごいいきよいでエルフが動揺した。
「ななな、何を言うのかね。俺はただ世界を知ろうとだね―――」
そんなエルフから、一枚のパンフレットが落ちた。
それをナイトが拾い、中身を見てみると、内容はこうだった、
『只今温泉郷では、オーク主催のビーグルレースやゼラチンレースが大盛況!
最大の見せ場は、コカトリスレース!稼ぐなら今しかない!!!』
と書かれていた。
「お前・・・まだ懲りてないのか・・・」
さすがにあきれた。一月ほど前ギランにあるドッグレースで大損をしていたはずなのに
懲りずに、また挑戦する気だ。
「いいだろ別に」
「はいはい、せめて全賭けなんてするなよ」
「わかってるよ」
エルフはそういうと、部屋を飛び出した。
「ふ、くだらん」
ダークエルフもまた部屋を出ようとした。
「お前はどこ行くんだ?」
ナイトが呼び止めた。ダークエルフは振り向きもしないで
「UBを見てくる。今後の参考になるかもしれないからな」
「左様ですか。まじめですね~」
「・・・・」
ダークエルフは足音もさせないで、部屋を後にした。
部屋に残ったのは、ナイトと王子だけだった。
「俺は寝るかな、お休み王子。ふぉあ~」
大あくびをし、座布団を枕代わりにして、ナイトは眠ることにした。
先のオーガ戦で一番活躍したのがナイトだったからである。
傷の方はウィザードのヒールにより完治したのだが、精神的な疲れは、
寝なければ治らないのであろう。
だが、王子は財布と格闘していた・・・

「さすがに露天風呂は違うわね~♪」
女性たちは露天風呂に来ていた。まだ夕方前のせいであるのか、
他のお客は誰も居なかった。
「お!しかも貸し切りみたいだよ♪温泉最高♪」
メンバーの中では一番幼い姫が歓喜に震えていた。
「そんなにはしゃぐと転ぶよ」
女ナイトが姫をなだめた。
「いいじゃない別に・・・それにしても、いいよな~みんなは~」
姫がみんなを見て回って言った。
「ナイトは無駄なお肉が無いからすごいスマートだし、エルフは髪がすごい綺麗だし
 ウィザードは大人の女って感じがするし、ダークエルフはかっこいいし・・・
 私なんて・・・はぁ~」
姫の癖が出てしまった。良く他人をみるといつもこのように嫉妬してしまうのだ。
「そんなことないわよ、私なんて男より強いからよってくる人なんて全然居ないし」
「私だって髪の手入れは大変だし」
「みんなそれぞれの悩みがあるんだから、姫にも姫のいいところが沢山あるわよ」
みんなはいつものごとく、姫をなだめた。これは日常茶飯事であった。
「そうだよね~みんな同じじゃつまんないわよな~」
いつものごとくなだめることに成功するのであった。
「うし!泳いじゃえ♪」
そういうと、姫は突然湯船に飛び込み、泳ぎだした。
「だめよ、姫」
ウィザードがそういうと突然、魔法を唱えた。
「バンパイアリックタッチ!」
ウィザードから出た緑っぽい大きな手が、姫を捉え、湯船から引き上げた。
「お風呂で泳ぐのはマナー違反ですよ。姫」
「ふぁ~い」
突然のことに混乱している姫であった。

そんな中、露天風呂近くで3,4人の男共が集まっていた。
「おい、見たか、久しぶりの客だ」
「ああ~見たぜ。しかも花園だ」
「今回は絶対に見逃せないぜ」
この男共はのぞき魔であった。
久しぶりの獲物も見つけたようなハイエナだった。
「早速行くぞ、前はもたもたしてたら遅かったからな」
「分かってるって、早く行こうぜ」
「おうよ」
男が振り返った瞬間、何かがいた。
長い槍を持ち、軽そうな体つきであった。
見た限り、スケルトンガードだ。
男共は硬直した・・・目の前のモンスターにさすがに焦った。
「だだだ、大丈夫だ。こここいつは、さささ、サモンモンスターだ
 怖がることはね~。手を出さなければ何もしてこない」
冷静を取り戻したのか、男はスケルトンガードの横を通ろうとした。
だが、スケルトンガードの横を通った瞬間、スケルトンガードは反応し、
持っていた槍の柄で男共を突き飛ばした。
「ぐあ!」
「兄貴~!」
倒れた男に集まり体を起こした。
「くそ、うかつだった。近づく奴を攻撃するように命令されていたのか」
「どうしよう兄貴~」
「驚くことは無い、見た所こいつ1匹だ。俺たちで何とかなるだろう」
「ほんとかよ兄貴!」
「行け!やろう共!」
「お~~~~!!」

「む・・・」
湯船に浸かっていたウィザードが声を洩らした。
「どうしたの?」
近くに居た姫が聞いてきた。
「私のスケルトンガードがやられたみたい」
「ええ!?」
「見張りように出しておいたんだけど、やっぱ無理のようね」
「そんな冷静な~」
「ってことは、誰かが覗いてるの!」
姫は立ち上がり、周りを見渡していた。
「大丈夫だって」
そういうとウィザードは姫を湯船の中に戻した。
「まだサモンが2匹居るから、取って置きなのがね♪」
そういうと、脱衣所のほうを見て、
「出番だよ。行っておいで」
みんなが脱衣所のほうを見ると大きな影が2つ走っていった。
ウィザード以外は愕然としていた。
「さぁしっかり暖まりましょう」
優々と湯船に浸かり直した。

「兄貴、何とか倒しましたぜ」
「うむ、すこし厳しかったが、これも楽園のため!もう少しだ」
「おう」
男共は辺りを警戒しながら進んでいった。
露天風呂の壁が近づくと匍匐前進で進みだした。
じりじりと進んでいると、後ろから、
「あにき~~~」
子分共の声が聞こえた。
「ばか!こんな所で声を出すな、ばれるだろうが」
後ろを見ようともせず、ひたすら前に進む、
壁まであと10メートルぐらいに迫ったとき、ふと重みを感じた。
「ばか!くっ付くな!自分で進め」
兄貴は進もうとするが、進まない。
1メートルはおろか、1センチも進まない。
「あにき~~~」
また弱そうな子分の声が聞こえた。
「だからなんだ!」
いい加減に怒れ、後ろを振り返った。
地面には子分共が、泣きそうな顔をしてこちらを見ていた。
1人の子分の背中は灰色の毛に覆われた柱のようなものが見えた。
兄貴はそれを伝って上を見てみると、親指ほどもある大きな牙をした狼の顔ダイアーウルフが大きな口からよだれを垂らし
もう1人のほうは肌色に大きな足、上を見ると右手に大きな棍棒を持ったプルート
さすがの兄貴も冷静では居られなかった。
「ぎゃ~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!」
叫んだ!喉がつぶれんといわんばかりに叫んだ!
そんな声に驚いたダイアーウルフはついつい後ずさりをしてしまった。
軽くなった体を起こし、男共は風のように消えていった。

そんな男共の叫び声は湯船に浸かっていたみんなに十分聞こえていた。
壁の隙間から外を見ると、2匹がぽつんと立っていただけだ。
のぞき魔の姿はそこからでは確認できなかった。
「ね、大丈夫でしょ」
ウィザードがにっこり微笑んでいた。
いつもお淑やかの彼女のイメージとは全然違うものだった。

食堂でナイトと王子が待っていた。
相変わらず、王子は財布と格闘中であった。
そんなに見つめても、お金は増えるわけでもなく、睨んでいた。
先に帰ってきたのは、女性たちであった。
温泉が気に入ったらしく、「また来ようね」とか話している。
そんなことを王子の耳に入れたら何と言うのか、ナイトには想像できなかった。
次に帰ってきたのは、ダークエルフだった。
UB観戦がためになったのか、ぶつぶつ言いながら、椅子に着いた。
最後はエルフだった。また大負けしたと一目でわかるほど落ち込んでいた。
そのあとは、みんなで楽しく食べ、飲んで、歌って、布団についた。

次の日、
「さぁ~出発だ!」
元気な王子の姿がそこにはあった。
実は、はずれと思っていたレースのチケットが大穴を出していたのだ。
赤字すれすれだった家計が、一気に駆け上った。
「カオス寺院目指して!GO~!」
彼らの旅はまだまだ続く・・・

数日後、温泉郷の宿に新たな働き手が着いたという。



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